受け継がれる
伝統・文化が根付く石見へ

久々に降り立った島根の地。今回の旅は世界遺産「石見銀山」や日本遺産のまち「津和野」など、名所がある島根県西部を巡る。
中でもEXILEのライブ演出に取り入れたことのある「石見神楽」、現地で観るのは今回が初めてである。初めて訪れる石見地方、どんな出会いがあるのか楽しみだ

念願の世界遺産「石見銀山いわみぎんざん」へ

最初に訪れたのは大田市の山間にある「石見銀山」。2007年に鉱山遺跡としてはアジアで初めて世界遺産に登録されたところだ。

この銀山は鎌倉時代末期頃、中国地方を治めていた大内氏が採掘していた。一時的に中断された採掘だったが、室町時代後期、博多の豪商・神谷寿貞が航海中に“光る山”を再発見し、瞬く間に日本全国そして世界へ石見の良質な銀が取引されたそうだ。

今日は、石見銀山ガイドの会の和上豊子さんに石見銀山を案内してもらうことにした。

人も、おもてなしも
温かい大森の町

銀山に携わっていた豪商や役所などで賑わっていた大森の町を歩く。江戸時代の建物をそのまま利用した風情ある土産店や飲食店などが軒を連ねている。そうかと思えば民家も多く、住民と観光客がすれ違いざまに「こんにちは」とあいさつしている。観光地でありながら、地元の人々の暮らしが一体化し、ゆるやかな空気が流れている。

さて、「熊谷家住宅」に立ち寄ろう。玄関を入ると土間が広がり、どっしりとした重厚な建て構えから相当な豪商の家だったことが伺える。奥からはおいしそうな匂いが漂ってくる…。

「ここでは“昔のくらし体験”を行っています。今日は新米を羽釜で炊いています。いかがですか?」。もちろん、いただきます!

羽釜の蓋を開けると湯気が立ちのぼり、炊きたてご飯の香りがふわっと広がる。その白いツヤツヤご飯は、もっちりとして旨みと甘みがしっかりある。昔ながらというのは、今では贅沢なことかもしれない。

熊谷家住宅を出ると次は石見銀山へ。ガイドの豊子さんによると、この緩やかな登り坂は石見銀山に続いているらしい。大森の町は言わば石見銀山の「序」であった。

石見銀山の要、龍源寺間歩りゅうげんじまぶ

「龍源寺間歩」、鉱山の入り口にたどり着いた。

「この植物を見てください。“ヘビの寝ござ”と呼んでいますが、正式にはカナヤマシダと言います。このシダは金、銀、銅があるところに生えているんですよ。だから、この下に宝物がある可能性が…」と笑うガイドの豊子さん。金銀財宝を知る植物、それに気付いた昔の人の知恵は不思議に思うことが多い。まだこの坑道には銀が残っていそうで、探検隊の気分になってきた。

「ここが龍源寺間歩です。江戸時代初期から掘られていました。入口付近は明治時代に掘られているので機械掘りです。真ん中辺りが江戸時代の穴。入ってみましょう」

坑道の壁には等間隔でほんのりと灯りが点いている。当時はサザエの殻にゴマ油を入れ、イ草を芯にしてランプにしていたそうだ。\次第に天井が低くなってきた。

「AKIRAさんは背が高いから頭が天井につきそうですね。ここは江戸時代の穴です。当時の人はそんなに背が高くなかったと思いますよ」

歩いている坑道とは別に、四方八方に大小の穴がいくつも掘られている。これは鉱夫が東西にある銀の鉱脈を探しながら掘っていたものだという。一掘り、一掘り…鉱夫が手作業で掘っていたかと思うと、ゾッと身震いがした。

「穴の中の作業なので粉塵を吸うし、灯りを焚いているのでススも出るため、鉱夫は長生きできなかったようです。だから“男30赤まんま”といって、30歳まで生きられたら赤飯とお頭付きの鯛でお祝いをしたそうですよ」

当時の過酷さは相当のものだっただろう。それでも銀を求めて穴を掘る鉱夫たちの思いとは…。銀は世界が欲しがった貴重なもの。宝探しは“ロマン”なのか、それとも“魔物”なのか…。石見銀山が世界遺産である訳が、間歩を歩いて分かった気がする。

石州せきしゅう和紙で神楽面を手掛ける
石見神楽いわみかぐら面 小林工房」へ

次は大田市温泉津ゆのつ町で石見神楽の“面”を制作している「小林工房」の小林泰三さんに会いに行く。小林さんとは以前からご縁があり、EXILEのドームツアーの演出に石見神楽を用いたとき、大蛇のメンテナンスをしてもらうために全公演に来てもらっていたのだ。

神楽の面もそうであるが、大蛇の顔も蛇胴も石州和紙でつくられ、素材が軽いおかげで、早いテンポの軽快な舞いが可能となり、それが石見神楽の特徴でもある。

石見神楽は30数演目あり、登場人物の総勢はなんと80近くにも及び、 その面は一つ一つ違うという。古くなった面は新調することもあるが、元の面を同じように復元する場合も多いのだとか。型をとり、その型に厚手の和紙から薄手の和紙へと何層もちぎっては重ねて貼っていく。手間と根気のいる作業である。

小林さんと、ものづくりや神楽談義に花が咲き、高まる気持ちのまま実際に石見神楽を観にいくことにした。

魂の舞「石見神楽いわみかぐら」を初見物

石見地方では神社の祭りに、夜通し神楽を舞うという。今宵は浜田市にある三宮神社の神楽公演を見に行くことにした。たくさんの演目がある中で、やはりEXILEのライブでも披露した「大蛇おろち」が見てみたい。

小さな神楽殿に入ると、舞台を囲むように人々が寄り添い座っている。赤ちゃんからお年寄りまで年齢層は幅広く、家族で来ることが多いらしい。それだけ地域に根付いているということか。

笛や太鼓の音が鳴り始めた。鼓動が高まる。

一番の見所は素戔嗚尊と大蛇の立ち合いだ。素戔嗚尊スサノオノミコトの太刀振る舞い、そして4頭の大蛇の迫力。とぐろを巻きながら素戔嗚尊の体に巻きついていく。そこに太鼓や笛などの軽快な音が追い打ちをかけボルテージが最高潮となる。息つくことも忘れるほど引き込まれるのはなぜだろう。魂の舞は圧巻だ。

この小さな空間の中、舞い手と観客が一体となった舞台は、同じ舞い手として見習うことが多い。演目が終わったあとも、感動の余韻が残った。

興奮と感動の余韻を残し、石見旅1日目が終了。

[1] 石見銀山「大森の町並み」:大田市

[1] 石見銀山「大森の町並み」:大田市

[1] 石見銀山「熊谷家住宅」:大田市

[1] 石見銀山「龍源寺間歩」:大田市

[2] 温泉津温泉:大田市

[2] 温泉津温泉:大田市

[2] 小林面工房

[2] 小林面工房

[3]三宮神社(石見神楽)

[3]三宮神社(石見神楽)

[3]三宮神社(石見神楽)